折り合い

 

わたしがずっとずっと好きだった男性から告白された。

多分約半年はすごく楽しくて、この世の栄華のようでこんな事が自分に起きるなんて、と毎日世界に触れ回りたいくらい幸せだった。

 

でもある時、知人を通して真実がわかった。

 

その人は私を好きだから付き合ったんじゃなくて、あくまで「わたしの彼への片想いを終わらせる&彼への恋心を無くす」ために付き合ったということ。

 

信じたくはなかったけど、実際に彼は徐々に冷たくなって、酷いことを平気で言ったり

他の女の人と普通に家で寝てたり、家に帰ってこなくなったりした。

連絡もつかなくなって、わたしは出て行くことにした。そのまま死ぬ予定だった。

 

だけど、共通の友達から電話が入る。

どうやら、わたしの長い片想いを終わらせて、楽しく生きていってほしいと思った結果の彼なりに考えた方法だったらしい。

わたしの片想いや恋はこのくらいしないと、本当に死ぬまで終わらないと、死ぬまでひとりぼっちになってしまうと判断して、でもなんとか幸せにはなってほしいから悪役を自ら買い出たということだった。

 

わたしは、暫く色んな感情で震えていたけど

好きなまま死んでいけるからそれでいい、と電話を切った。

 

わたしの恋は、相手に毒だ。

それでも、ひとりぼっちでもいいから

好きなままで消えていきたかった。

大事な人にしたくもない演技をさせて

時間も使わせて、やさしい人なのに

よほど傷ついただろうに。

 

ありがとうと言ってから、消えよう。

でも

それも言われるのすら嫌かもしれない。

だから

彼が望んだとおり、彼への気持ちを殺して、

なかったことにして、全部失くしてしまおう。

そう思って、海に飛び込んだ。

 

水の冷たさはやけにリアルで、

不思議と苦しくなくって、海面に向かっていく泡がきらきらしていた。

そのままぼーっとしていたら、いきなり引き上げられて気づいたら実家の畳の部屋にいた。

 

会ったことないけど、多分わたしのひいおばあちゃまが近くに来て、

やさしいひとだったねえ。って頭をなでてくれた。

記憶は簡単には無くならないんだな。

って悲しくてめちゃくちゃ大きい声で泣き喚いた。

 

 

っていう夢を見た。

 

夢って現実との調整役だ。

どこかで私大声出して泣きたかったのかなあ

あと、死ぬってリセットだから何かそうしたい気持ちがあったのかなあ、

 

なんにせよ、夢でよかった。

会いたいな。

 

でも、

会いたいと言って困らせてしまうなら

嫌われてしまうならこのままでもいいかな。

 

好きになってほしいとはもう思わないから、

ちょうどいい好意をもった状態でたくさん話したい。