雨のよる。
深夜AM2:00、小雨と、冷たい風の中割と長いこと、抱きしめあってキスをした。
口紅は落ちていた。
おかみさんが、戸締りをした時にわたしは気が付かなかった。
あれは。ふたりへの追い出しというか、送り出しなのかもしれない、と。
縋るように見つめられたら、差し上げるしかできない気がして。
わたしは、唇を開いてしまった。
キスして、と言われて滔々とした思考はあまり賢くない行動を生んだけれど、結局わたしがしたかったんだなと、よくわかった。
途中からはもう、よくわからなくなっちゃった。
乾いた舌でするキスは、ざらついてどうだったのか。
どうなりたいん?
って、その答えはわたしから言えることではないし。
ハグまではよくても、キスはわたしがその先を欲しがってしまうから、だめなのよ。
体については、めちゃくちゃにして欲しくなってしまう。そこは情けないけど、願望がある。
塗り替えられたい、わたしの体はわたしのものではなくなってほしいから、好きにされたい。
だからわたしの理性はがんばったのだけど、 頑張りきれなかったし、なんならだめだった。
好きだから、うれしかった。
悲しくなってしまうひとばかり、好きになってしまう。
わたし、悲しくなりたいのね。
ずっと悲しいものね。寂しいのよね。
でも泣いたら、悲しいって言ったら嫌われちゃうから、我慢したのにね。
あの人も、そんな気持ちがあったのかな。
「どうせ」と思いながら、手を伸ばしたのかな。
何度もキスをしたのは、性欲以外に溢れ出た何かがあったのかな。
寂しい、とか抱きしめられたいとか、そんな青色、藍色、紅掛花色のような、そんなせつないなんて言葉じゃ足りない複雑が混じった感情を吐き出したかったのかな。
次会った時は、どうだろう。
怖がりながら、体を繋いでしまうのだろうか。
わたしは彼のかなしさとか、人を信じられない弱さを抱いてあげられるのだろうか。
大丈夫、と抱きしめてあげられるのだろうか。
彼は、からだではなくてわたしを抱いてくれるのだろうか。
わたしのかなしさや、葛藤や甘えを許してくれるのだろうか。
同じように、わたしはわたしに無い彼の葛藤や甘えを許せるのだろうか。気づけるのかな。
目には見えない深い底で私たちは出会えるのだろうか。お互いを見つけられるのだろうか。
見つけた時に、こわがる気持ちを我慢せずに、あいされたい。と、あいしたい。でもどうやったらいいかわからない。と伝えられるのだろうか。教えてと請えるだろうか。
たいせつなひとだからこそ、どう触れるかってとても重要なことだと思ってるから、思っていることをしっかり伝えたい。
もし、そう思ってもらえないのだとしても
わたしはただ与え続けることをしたいと思う。
それが、約束した「考え続けたい」ということだとそう思う。
深いところで繋がるって、そういうことなの?